理事長 菊地 陽輔

【はじめに】
 藤沢市は44万人を超える人口を擁し、神奈川県内でも4番目の規模を誇る都市として発展を続けています。湘南の海と豊かな自然に恵まれ、江の島という観光資源を有し、さらに慶應義塾大学、多摩大学、日本大学、湘南工科大学など多くの教育機関が集まる学術都市でもあるこのまちは、ベッドタウンとしての側面をもちながらも、なお人口増加を続ける稀有な都市です。さらに喜ばしいことに、事業所数は2016年の13,027事業所から2021年には13,164事業所へと増加し、地域経済は着実に成長を続けています。しかしその一方で地域に根ざした活動への参画意識の希薄化という課題も抱えています。このような時代の転換期にあって、藤沢青年会議所は61年目の新たな一歩を踏み出します。
 私たちは、1966年の設立以来、明るい豊かな社会の実現を目指して運動を展開してきました。先輩諸氏が築き上げてきた歴史の中には、江の島の灯台を守り抜いた誇るべき実績もあります。取り壊しの危機にあった灯台を、市民一人ひとりに電球を購入してもらい、ライトアップすることで価値を示し、藤沢の象徴として守り抜いた。まちの課題を自分事として捉え、市民と共に行動し、明るい豊かな社会を実現していくこの精神こそが、私たち藤沢青年会議所のDNAです。
しかし、時代の変化とともに、私たちの活動の本質が改めて問われる時期にあると認識しています。青年会議所は単なるイベント団体ではなく、リーダーシップを開発し、まちに真のリーダーを輩出することこそが、私たちの使命なのです。様々な分野で活躍するリーダーの多くがJC出身者であることは、この組織のもつ可能性を如実に物語っています。この原点に立ち返り、なぜ私たちが存在し、何のために活動するのかを明確にすることが、今こそ必要とされています。人づくりこそがまちづくりにつながる。この信念のもと、私たちは原点に立ち返り、まずは70周年という節目に向けて確かな一歩を踏み出し、さらに80年、そして100年へと続く持続可能な基盤を築いていきます。私自身が実感してきた成長の喜び、仲間との絆、そして地域への貢献。これらすべてが融合し、一人ひとりの成長が組織の発展を生み、それが地域の活性化へとつながる好循環を創出することで、藤沢の持続的な発展に貢献してまいります。専務理事から理事長へ、支える立場から牽引する立場へ。この貴重な機会を最大限に活かし、新たな風を吹き込んでまいります

【地域と共につなぐ未来への架け橋】
 藤沢市には慶應義塾大学、多摩大学、日本大学、湘南工科大学など多くの大学があり、起業家精神をもつ若者たちが活躍しています。実際に、2024年度の大学発ベンチャー数は全国で5,074社と、前年度から786社増加し、企業数及び増加数ともに過去最高を更新しました。中でも慶應義塾大学は、前年度から86社増加するなど、本市に拠点を置く大学からも数多くの起業家が生まれています。彼らは新しい価値観と情熱をもち、NPO法人を立ち上げるなど、すでに社会課題の解決に向けて行動を起こしているのです。デジタルネイティブ世代として育った彼らの発想力と行動力は、私たちの想像を超えるものがあります。そうした彼らの優れた能力は、私たちに新たな視点と革新的なアプローチをもたらしてくれるでしょう。一方で私たちは実践的な経営ノウハウや地域とのネットワーク、そして事業を継続させるための経験を共有することができます。このように、若い世代の新鮮な発想と私たちの経験が融合することで、双方が成長し合えるWin-Winの関係を構築できると確信しています。
そこで本年度は、大学生起業家と現役経営者をつないでまいります。若者たちが求めるコミュニティと、私たちがもつ経営ノウハウや人脈を融合させることで、新たなイノベーションを生み出すことを目指します。単なる知識の伝達ではなく、世代を超えた双方向の学びを通じて、地域全体の活性化につなげていきます。
これは単なる交流ではありません。潜在的な地域課題を顕在化させることも重要な役割です。前例がなく、新たな挑戦を避ける姿勢では、真に豊かなまちづくりは実現できません。新たな挑戦を通じて、インフラの課題、新たなビジネスモデルの必要性、規制緩和の重要性など、様々な課題が浮き彫りになります。
また、藤沢が誇る地域資源を活用した新たな取り組みも推進してまいります。先人たちが守り抜いた歴史的価値を現代的に再解釈し、多様な市民の参画を得ながら、地域の魅力を発信する革新的な運動を展開します。こうした取り組みを通じて、大学生、地域住民、行政、そして私たちが一体となって、新しい価値を創造していきます。地域に新しい風を吹き込み、持続可能な発展への道筋を描く挑戦として、産学官民の連携を深めながら推進してまいります。

【次世代へつなぐ希望の種】
私たちのまちづくりは、今を生きる私たちのためだけのものではありません。未来を担う子どもたちに、どのような地域を残していくのか。この問いに真摯に向き合うことが、私たちの責務です。特に、少子高齢化が進み、社会環境が大きく変化する現代において、行政による子育て支援施策に加えて、私たち青年会議所も独自の視点から地域全体で子どもたちの成長を支える取り組みを展開することで、より豊かな育成環境を創出してまいります。
青少年事業の真の対象は子どもたちだけではないと考えています。子どもたちが参加し経験する物事の決定権は親にあります。子どもたちの成長において最も重要な存在は、親ではないでしょうか。だからこそ、青少年事業は親子が共に参加し、共に学び、共に成長する場であるべきだと考えます。
そこで、体験型の事業を中心に展開してまいります。様々な体験を通じて、子どもたちが自ら考え、行動し、そして失敗から学ぶ機会を提供します。しかし、それだけではありません。親もその場に参加し、子どもの成長を間近で感じ、家庭に帰ってからも継続的に子どもの成長を支えられる環境づくりの一助となる事業を展開してまいります。
また、藤沢市は人口が44万超まで増加している一方で、出生率が伸び悩んでいる現状にも目を向けます。育児の大変さや経済的な不安から、第二子を諦める家庭も多い中、本当の課題は何なのか。若い世代の親たちの声に耳を傾け、子育てに対する前向きなイメージを醸成する事業を展開します。
さらに、発達に特性をもつ子どもたちへの理解促進も重要な課題です。子どもたち一人ひとりがもつ個性や特性への理解を深め、早期から適切な支援を行うことで、の可能性を最大限に引き出すことができます。すべての子どもたちがもつ個性を尊重し、その可能性を信じる社会の実現を目指します。
青少年事業を通じて、子どもたちに利他の精神を育むとともに、親世代にも子育ての喜びと責任を再認識してもらう。この双方向のアプローチこそが、次世代へつなぐ希望の種となり、持続可能な地域社会の実現につながると確信しています。

【真のリーダーシップ開発を目指して】
 青年会議所の存在意義は、リーダーシップを開発するために成長の機会を提供することにあります。私たちは20歳から40歳までの限られた時間の中で、会社組織では経験できない様々な役職を経験し、組織運営を学び、失敗を恐れずに挑戦できる場を提供しています。自社では様々な立場にある者も、ここでは一委員として、あるいは委員長として、異なる視点から組織を見つめ直す機会を得ることができます。この単年度制という独特のシステムこそが、短期間で濃密な学びと成長を可能にする青年会議所の最大の特徴なのです。
しかし、近年その本質が薄れ、活動の目的が見失われているのではないかと感じています。親睦を深める会ばかりが注目され、固い話は敬遠される傾向があります。確かに親睦も大切ですが、なぜ青年会議所でなければならないのか、なぜこの活動をするのか。その「なぜ」を一人ひとりが深く理解することが重要です。人脈形成や仕事のつながりを求めて入会することは決して悪いことではありません。しかし、それだけでは青年会議所の真の価値を示すことはできません。私たちには、個人の修練・社会への奉仕・世界との友情という三信条があり、これを実践することで得られる成長こそが、青年会議所の真の価値なのです。
そこで、会員一人ひとりが青年会議所の本質を理解し、自己成長の機会として活動に取り組めるよう、アカデミー機能を強化します。JCの歴史や理念、そして様々な分野で活躍するJC出身のリーダーたちの姿を学ぶ機会を充実させます。世界大会での国際交流の経験や40歳で卒業した後も地域で活躍する先輩方の姿など、これらすべてが私たちの目指すべき道標となります。
「人は人によって磨かれる」という言葉通り、会社組織では決して経験できない立場や責任を通じて、リーダーの本質を学びます。社員に対して当事者意識を求める経営者が、JCでは一委員として当事者意識をもてているか。この矛盾に気づき、自省することこそが、真のリーダーへの成長につながります。当事者意識をもって活動することで、組織の課題を自分事として捉え、解決に向けて主体的に行動できる人財を育成してまいります。そして、青年会議所での経験を糧に、卒業後も各分野で中心的な役割を担い、地域社会の発展に貢献するリーダーとして活躍していただくことを目指します。

【仲間とつなぐ組織の輪】
 会員拡大は、単に会員数を増やすことだけが目的ではありません。一人でも多くのリーダーをまちに輩出するために、一人でも多くの青年に成長の機会を提供することが真の目的です。志を同じくする仲間がいることに誇りをもち、さらなる仲間を迎え入れる準備を整えなければなりません。
 藤沢市の人口は増加していますが、藤沢青年会議所の会員数は減少傾向にあります。これは、私たちの活動の意義が十分に伝わっていない証拠です。事業の動員数を増やしたいわけでも、頭数を揃えて迫力を見せたいわけでもありません。改めて、本年度は「なぜ拡大が必要なのか」という根本的な問いに向き合い、会員一人ひとりがその答えを自らの言葉で語れるようになることを目指します。私たちの使命は、この地域に一人でも多くのリーダーを輩出することであり、そのためには私たちの門戸を広げ、多くの青年に成長の機会を提供する必要があるのです。新たな仲間を迎え入れることは、組織に新しい視点とエネルギーをもたらします。多様な個性が集まることで、会員同士の化学反応が生まれ、予想もしなかった革新的なアイデアが生まれることもあるでしょう。そこで、会員数を増やしている他の地域の青年会議所の成功事例に学びながら、藤沢独自の魅力を最大限に活かした拡大戦略を展開します。神奈川ブロック協議会での事業などにも積極的に参加し、効果的な会員拡大を実現します。
 多様な価値観をもつ仲間との出会いは、私たち自身の成長にもつながります。この信念のもと、積極的な会員拡大を推進してまいります。入会対象者一人ひとりと真摯に向き合い、青年会議所での活動がもたらす成長の機会、仲間との絆、そして地域への貢献の喜びを、私たち自身の経験を伝えていきます。それが結果として、強固な組織基盤の構築と、地域社会の持続的な発展につながると確信しています。

【100年へつなぐ組織基盤】
 60 周年という節目を越えた今、私たちは70年、80年、そして100年に向けた確かな一歩を踏み出さなければなりません。100年続く組織となるため、まず70周年までに達成すべきは、青年会議所の本質的な魅力を内外に示すことです。それは、華やかなイベントを開催することではなく、リーダーシップ開発と成長の機会を提供するという本来の目的を達成し、地域に真のリーダーを輩出し続ける組織であることを証明することです。
 組織の持続可能性を支える最も重要な要素は、適切なガバナンスの確立です。近年、組織内のコミュニケーションラインが曖昧になり、各役職の尊厳が軽視される傾向が見受けられます。委員会メンバーが委員長を飛ばして副理事長に連絡することや、理事長が直接委員会に介入することは、組織の秩序を乱すだけでなく、各役職者の成長機会を奪うことにもつながります。
そこで、各役職の権限と責任を明確にし、それぞれが誇りをもって職務を遂行できる環境を整備します。委員長には委員会運営の自主性を、副理事長には担当委員会への適切な指導的役割を付与し、組織全体が有機的に機能する体制を構築します。これは制約ではなく、むしろ一人ひとりが自らの役割を全うし、最大限の力を発揮するための基盤づくりです。
また、会員数の維持・拡大も組織存続の重要な要素です。なぜこの組織にいるのか、青年会議所でなければならない理由は何なのか。この根本的な問いに対する答えを、会員一人ひとりが自らの言葉で語れるようになることが必要です。その確固たる信念が、新たな仲間を引き寄せる磁力となり、70年、80年、そして100年へと続く組織の礎となります。
 先人たちが守り抜いてきた不屈の精神とプライドを受け継ぎ、私たちも藤沢青年会議所という灯を絶やすことなく、次世代へと引き継いでいく責任があります。委員会運営の活性化を図り、真剣に議論し、切磋琢磨する場として機能させることで、組織全体の活力を高めてまいります。
100周年の時、私たちの後輩たちが誇りをもって活動できる組織を残したい。その夢を実現するために、61年目という新たなスタートの年に、揺るぎない組織基盤を築き上げることを目指します。

【結びに】
「つなぐ」これが私の掲げるスローガンです。過去から未来へ、人から人へ、思いから行動へ。すべてをつなぎ、新たな価値を生み出していきます。60年の歴史を受け継ぎ、100年へとつなぐ架け橋となることが、私に課せられた使命だと考えています。先人たちが「恩送り」の精神で紡いできた想いを、私たちもまた次世代へと確実につないでいかなければなりません。
 藤沢青年会議所での活動は、結果として全て自身の成長へとつながるものと信じております。「やらない善よりやる偽善」という言葉があるように、まずは行動することが大切です。物事に対しては、全て自分のために取り組んでほしい。自分のために真剣に取り組むことが、結果として誰かのため、まちのためになると考えております。この逆説的な真理を理解し、挑戦することで、私たちは成長し、その成長がまちの発展へとつながっていくことでしょう。
 単年度制という制約は、実は最大の強みでもあります。一年という限られた時間だからこそ、私たちは全力で駆け抜けることができます。毎年新たなリーダーが生まれ、新たな挑戦が始まる。この繰り返しが、組織に活力を与え、常に進化し続ける原動力となっています。青年会議所での経験が自分たちの成長につながり、それが各々の会社の発展につながり、そして巡り巡って藤沢のまちに還元されていく。この好循環を生み出すことが、私たちの目指す姿です。
 私は100周年の時、歴代理事長として席に座り、その時の理事長の話を聞きたい。藤沢青年会議所が存続し、発展し続けていることをこの目で確かめたい。そのためにも、61年目という新たなスタートの年に、私は理事長として、会員一人ひとりの成長を支え、組織の基盤を整え、次世代との架け橋を築いてまいります。
 青年の学び舎として得られる無数の機会を大切にし、私たちは史上最高の自分を目指していきます。共に成長し、共に挑戦し、共に未来を創造することをお誓い申し上げ、2026年度理事長の所信とさせていただきます。

基本理念

『つなぐ』

~過去から未来へ、人から人へ~

地域と共につなぐ未来への架け橋

次世代へつなぐ希望の種

真のリーダーシップ開発を目指して

仲間とつなぐ組織の輪

100年へつなぐ組織基盤