理事長 石井 世悟

【はじめに】
今こそ、青年会議所が求められているのではないか。
新型コロナウイルス感染症がわずか数か月で世界を大きく変えた。その脅威と影響は日本にも及び、私たちの暮らすこのまちにも大きな爪痕を残している。これからは近年増えてきた自然災害に加えてウイルスの猛威にも立ち向かわなくてはならない時代に入った。誰もが自分の暮らしや仕事で手一杯で、まちのことを考えている余裕なんてないのかもしれない。だからこそ、誰かがまちのために、未来のために立ち上がらなければならないのではないか。誰かのせいにするのではなく、誰かを待つのではなく、その誰かが自分であり、我々なのではないだろうか。困難な時だからこそ、自分の好きなまちだからこそ、愛する人たちが暮すこのまちだからこそ、止めることなくその運動を続けなければならない。今こそこのまちの変革者たれ。

【世界と藤沢と私たち】
2030年を一つの大きな区切りとして国際連合を中心として世界はSDGsを掲げて足並みを揃えて世界平和の形をつくる運動を始めている。背景には地球規模で考えなければならない課題である環境問題、エネルギー問題、食糧問題、人権問題、社会開発問題、教育問題等の解決が求められているからだ。しかし、自国の利益や過去の遺恨等の課題は大きく、政治でも市民意識でも価値観と捉え方の温度差があり、学識者では意見や立場の違いもあり、実現の可能性はいまだ不透明である。日本も先進国の一つとして行動をする責任があり、その課題解決の期限は待ったなしであり、一刻も早く決断と行動をしなければならない。
一方、地域に目を向けてみれば、国の政策以外にも各都道府県や各市町村でも取り組みは始まっている。藤沢では江の島を中心とした湘南という海岸保護や三つの谷戸をはじめとする自然豊かな森林保護と活用、先人の方々が築き上げていた旧東海道藤沢宿などの文化を活かした活動拠点づくりなど様々な取り組みが行われている。世界はあらゆる国や地域が集まり形成されていて、日本は各都市の集まりで形成されていて、藤沢などの都市は多くの人と物、歴史や文化で形成されている。つまり、藤沢も世界の一員であり、市民の意識と行動が世界をつくっていると言える。未来の平和のためにも、藤沢が先駆けて地域から行動を起こすことで世界をリードし、結果として私たちの暮すまちや未来を守ることに繋がる。

【私たちがこのまちで出来る事】
私たちが出来ることは何なのか。昨年は未曾有のウイルス災害がこれまでの価値観や社会の在り方を根底から問い質してきた。社会のしくみは多様化し加速度を増して変化をし、特に経済的には先行きが不安視されている。
しかし、そんな中でも私たちは今を生き、明るい未来を創造していくことをあきらめてはいけない。私たちの思い描く未来を創るために、今を少しずつでも変えていくことが求められている。そう、私たちは今ある現実を変えることで未来を変えることができる存在なのだ。今行動することは未来からの使命であり、新たな明日を創る希望なのだ。変化を恐れず行動することで、新しい価値観の創造を起こそう。
そして、ゼロからイチにする運動を綿々と受け継いでいる青年会議所運動が根付くこのまちだからこそ出来ることがあるはずだ。55年のあゆみの中では江の島のシンボルである灯台を守り、先人が歩んできた歴史を広め、森から川から海へと自然を守り、多くの子供達に夢や希望を与え続けてきた。時代や社会は変わっても、青年会議所運動の基本である三信条とその地域の特性を活かしたまちづくりを行うという、まちのリーダーとしての自覚と挑戦する強い思いは変えてはならない。そのために、まず私たちがやらなければならないことは藤沢の今を知り、『奉仕』では地域と繋がり、『修練』では仲間と繋がり、『友情』では世界と繋がることである。地域と向き合うことで、本当に必要とされる団体となり、全メンバーが活動に参画することで仲間が増え、機会を捉えていくことで活動の幅が大きくなる。自己満足で終わらず、ゼロからイチを生み出したその先へしっかりと繋げていくように大きな波を起こそう。

【このまちで活動する事】
人生において大きな財産となり、最大の贅沢は人間関係の豊さであると私は信じている。青年会議所では、どんな事業をするのか、どんな役職の担いを全うするのか、という事がよく注目されるが、私の青年会議所での経験と学びの中では『誰とやるのか』ということがより重要であると感じた。『何をしたのか』ということも重要であるが、それ以上に大切にしてほしいことは、それは一人では行えていなかった、ということであり、そこには必ず仲間の存在があったということだ。つまり青年会議所の運動は横にも縦にも人の繋がりで成り立っていて、それを意識し活動することで大きな力を発揮できるということである。一人では成長も活動もできない。人は人でしか磨かれず、自らが変わることで周りを変えていくことができる。だからこそ一つ一つのご縁を大切に、仲間と共に活動する中で信頼と結束を高めていただきたい。
生涯の宝物はきっとその中で育まれる。
また、青年会議所は地域に根差した団体であると同時に国際組織でもあり、国内だけでも2万5千人以上の仲間がいる。全国津々浦々で多彩な事業が行われ、十人十色の仲間が地域に根を生やして日夜活動している。私たちもその事を意識して、地域の活動だけにとらわれず出向や渉外事業にも積極的に参加できるように、あらゆる機会を掴み、フロー体験を通して、自身の可能性を信じ、成長していただきたい。
そして、一年開催延期となった東京オリンピック・パラリンピックについてはセーリング競技の開催地として、ポルトガル共和国、エルサルバドル共和国エジプト・アラブ共和国の三カ国の事前キャンプ地として、それらの機会を掴むことで、市民交流の促進と機会の活用を行い、その繋がりを未来へのレガシーとしよう。

【変化を起こせる組織へ】
激しく変化を繰り返す時代と世界の流れの中で活動をしていくためには、組織も変化をしていく必要がある。
しかし、変化に対応するのではなく、変化を起こしていく組織としてその時代の先駆けとなり、運動を展開することに青年会議所の役割があるのではないだろうか。そして、長年積み重ねてきた運動の歴史を紡ぐためにも、変わらないための変わる覚悟と決断がいま必要である。
その変化を起こすための大きな柱が会員資質と組織運営にある。会員資質については品格ある青年経済人としての研修に限らず、社会や企業でも活かせる各種研修会を開催していくことと、その時代とニーズに合った最新の学びを得るために、時には講師を招き研修会を開催して、より深い学びの機会をつくる。
組織運営については根幹にある定款等の検証を行うことで、社会の実情や会の運動を円滑にするために必要な変更を行う。大震災や豪雨災害、ウイルス災害等の緊急事態にも対応でき運動を止めることがないような組織となり、まちで必要とされるリーダー育成を行い、地域に根差した運動を行えるための変革に必要な改革を進める。
藤沢青年会議所の活動への参画者を増やし、運動の理解者と変革者を増やすために、より強い組織を創ろう。

【意識改革から始まる仲間の輪】
会員拡大の本質は意識改革の伝播であり、会員の拡大を行うこと自体が青年会議所の運動である。まちを良くするためには大きな世論をつくるか、あるいは掴むことが重要になる。その為に地域に根差した青年が多くの仲間へそれらを伝播していく必要があり、多くの理解者と協力者を得ることが、一つの大きな動きへと繋がり、まちを動かすことができるのである。
会員を拡大していくことは青年会議所の運動を継続していくためにも必要不可欠である。新型コロナウイルス感染症の影響もあり会員拡大も難航し、今までのような対面式だけでは入会対象者を増やすことが困難になった。
会員拡大の活動は入会対象者の幅とアプローチの数を増やすことが重要であり、あらゆる手段を活用しながら積極的な行動を続ける必要がある。入会のきっかけは人それぞれとなるので、入会対象者にフィルターをかけず、組織の受け入れ体制の整備と併せて入会対象者との対話をとおした丁寧な受け入れを進めよう。
青年会議所は自らを変革し、地域を変革し、社会を変革することのできる人が運営する組織である。入会で終わらせず、退会者を出さない組織として、卒業までの自己成長を実現できる組織を創ろう。

【地域を知り繋げよう明日への運動】
青年会議所の運動はその時代とその地域にあわせて変化をし、各地でそれぞれに違った活動をしている。なぜ同じ活動ではなく、違った活動をしているのか。それは活動の根底にあるものが的確にそれぞれの地域の現状を把握していることにある。地域にゼロからイチを生み出すための事業を行う際に一番にすべきことは背景の確認と調査である。事業が地域に影響を与えるとしたらそのまちのニーズに応えることが必須となる。
人もまちも隣人や隣まちと繋がることで成り立っている。世界に目を向ければ、命を脅かす課題や人権、まちの未来を顧みない課題が散見してしまっている。それらの課題は決して対岸の火事ではなく、自分事として捉え助け合うことで解決できる課題だと思う。助け合いの中で藤沢は世界の一員として果たすべき役割があるはずだ。
その役割は何なのか、藤沢のまちができることは何か。
世界をリードするまちとして率先してSDGsが地域に馴染むように推進していき、市民一人一人の行動を変えていくことで、小さいかもしれないが、確かな一歩から始めよう。地域のブランドや価値を高めるために世界の課題に向き合い、持続可能な社会をつくることで、住み暮らすこのまちを豊かにできる。そのために地域の今を知り、明日のための運動を続けよう。
藤沢は温暖な気候風土や地理的な利を活かしたライフスタイルの人気もあり人口減少、消滅都市の危機と言われる現代において、今もなお人口は増加し2030年までそのピークは続くと言われている。その要因はどこにあるのだろうか。地域を知るために、まずは地域の基盤となる地域ネットワークである自治会・町内会等の地域活動に注目することで、若年層の地域活動の参画を促し、多種多様な団体との連携を広げよう。世界の中での藤沢と43万人の市民の繋がりで成る藤沢のマクロとミクロから地域を捉えることで運動の相乗効果を起こそう。

【未来へ繋がる人を育てる】
豊かさとは何なのか。人もまちも豊かであれば、争うこともなく、心が満たされる暮しが続くのではないだろうか。
三つ子の魂百まで。幼少期の感情形成や暮し、教育がその人の生涯を左右するであろうということわざである。
つまり、子供のころの体験が重要であり、青少年の健全育成こそが豊かな人とまちを創るためには必要という事である。青年会議所の会員は20から40歳までの青年の集まりであり、自ら子育て中であったり、ついこの前まで青少年であったり、子供達に近い大人という存在だ。子供たちの事を考える際は同じ目線に立つことが重要である。誰のための教育であり誰のための機会なのかを常に問いながら進める必要がある。その点から考えると青年会議所は子供達に寄り添った機会を創ることができ、豊かな未来に繋げることができる。
差別や偏見、機会の格差が広がる現代において、インクルーシブな考えなど多様性が馴染み、違いがあることが当たり前の社会をつくることが求められている。誰にとっても優しいまちであるために欠かせないことが教育と習慣である。大人になってから新たなことを学ぶことは非常に難しく、時間もかかってしまう。しかし、語学を学ぶことと同じように幼少期の学習能力と習慣化は驚異的能力である。それ故に、小中学生にとらわれず、未就学児から20歳までを視野に入れて、未来へ繋がる運動を起こそう。

【信頼と結束を育む組織運営】
力強い運動を進めるためには一定のルールと信頼関係による一体感が必要になる。その土台となり潤滑油となるのが円滑な会議の設営と運営だ。全会員が等しくルールを理解し順守することがまずは求められる。そして、会議は誰かがつくるのではなく、みんなが協力をしてつくり上げるものであるから、一つ一つの会議の目的と意義を理解した上で積極的な参画を促していく。
また、会の基礎となる組織運営だからこそ、時には柔軟な変化が求められる。危機管理の視点からは運動の歩みを止めないためにも、会員の参画推進をするためにも、会議の意義を考慮し開催方法も多様であるべきであり、一人一人に寄り添わなければならない。今後はWEB会議を活用したり、服装や参加方法を検証したり、会議の質を重視した設営と運営に変化させていく。
また、今日までの地域において青年会議所に対する信頼は昨日今日の活動で出来たものではない。多くの先輩方の力強い運動の積み重ねの実績であり、どの一つが欠けても成しえないものである。55年のあゆみを先輩の皆様との交流の中から学ぶことで、その背景と活動のヒントを得ることができる。更なる信頼と結束を固めるために、縦にも横にも繋がりを広げることで強い意志をもった組織を創ろう。

【結びに】
青年会議所を自分の力にしよう。青年会議所は活動を仲間と共にすることで地域貢献や問題提起など多くの社会開発を行う団体である。しかし、それ以上に自己研鑽の場として社会的成長期である青年期だからこそ多くの機会を活かして自らを成長させることが出来る学び舎でもある。
自分の力にするために、青年会議所だからできる事をしっかりと掴むことで、その意義と活動の目的を理解し想像以上の自分と出会い、入会したら終わりでなく、入会後が始まりとして、多くの仲間を見つけて力強く活動に参画してもらいたい。その力が中長期的なLOMの成長に繋がり、会員同士でのモチベーションの向上に繋がる。
そして、何より青年会議所に入会したことで生涯の仲間と出会い、卒業を迎えるその時には入会して良かったと思える、そんな青年会議所をみんなで創りたい。決して一人の頑張りだけではできない。実現のためには多くの仲間と磨き上げて、共に運動をすることで得る感動を共有することが必要である。その一瞬一瞬を大切に過ごせる、人の温もりに満ち溢れたまちに育てるために、私たちが可能性を疑うのではなく、まさに青年としての英知と勇気と情熱をもって率先して行動していこう。そう、一人一人がこのまちの変革者としてゼロからイチを生み
出す力の源なのだから。
貴重な青年期を青年会議所という運動で過ごす日々が、誰にとっても実になるために全身全力で理事長の職を全うすることをお誓い申し上げ、2021年度の理事長としての所信とさせていただきます。

基本理念

「変革者たれ」

~ゼロからイチにする運動を起こそう~

基本方針

変化をおそれない成長できる組織へ
地域に広がる意識改革の繋がり
一つでも多くの機会を掴む
人と地域と繋がり協働した和の創造
人間関係の豊かさを育む
信頼と強い意志の調和で紡ぐ組織運営